「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)【テキスト版】

(2)人権を保護する国家の義務に関する取組

 

イ. 開発協力・開発金融

 

(既存の制度・これまでの取組)

 

 2015年に閣議決定された「開発協力大綱」では、開発協力の基本方針の一つとして基本的人権を含め人間の安全保障の推進を掲げている。また、開発協力の適正性を確保すべく被援助国の基本的人権の保障を巡る状況に十分注意を払うことを定めており、その適切な運用に努めてきている。開発協力事業を実施する際には、国際人権諸条約を始めとする国際的に確立した人権基準を尊重するとともに、女性、先住民族、障害者、マイノリティ等の社会的に脆弱な立場にある者の人権について、これまでも特に配慮してきているが、更なる取組に努める。

 JICA、JBIC、及びNEXIは、環境社会配慮のためのガイドラインを導入している。また、必要な情報開示、及び関連する苦情処理手続を導入し、その事業の人権、環境及び社会への影響に配慮してきている。契約要件として、JICAの有償及び無償資金協力事業において使用されているそれぞれの標準入札図書においては、人権尊重も含まれる当該国の労働関連法令遵守を契約条項として明記するなど、取り組んでいる。

 JBICでは「環境社会確認のためのJBICガイドライン」において、対象プロジェクトに求める環境社会配慮として、人間の健康と安全への影響及び自然環境への影響だけでなく、人権の尊重を含む社会的関心事項等についてもそのスコープとしていることに加え、JBICとして借入人等が環境社会配慮を確実に実施するために必要と考える場合には融資契約等を通じた働きかけ等の取組を行っている。

 また、国連安全保障理事会決議第1325号及び関連決議を履行するために策定した「女性・平和・安全保障に関する行動計画」においても、平和・安全保障分野、人道支援、復興の全ての活動における女性の参画、エンパワーメント、女性のニーズを踏まえた対応、ジェンダー平等促進、女性の人権保護の要素が含まれている。

 

(今後行っていく具体的な措置)

 

開発協力・開発金融分野における環境社会配慮に係る取組の効果的な実施

  • JICAでは、「環境社会配慮ガイドライン」を定め、相手国等の法令や基準等を遵守するのみならず、世界銀行のセーフガードポリシー等と大きな乖離がないことを確認し、協力事業の実施に当たり国際的に確立した人権基準の尊重及び環境社会配慮を継続していく。特に、協力事業に対し社会的に適切な方法で合意が得られるよう、情報を公開した上で地域住民等のステークホルダーとの十分な協議を行い、また、その際は社会的弱者について適切な配慮がなされるよう引き続き留意する。【外務省】
  • JBICでは、「環境社会配慮確認のためのJBICガイドライン」を、環境社会配慮全般及び人権に関する国際的な枠組みの中での議論、並びに公的輸出信用政策と環境保護政策との一貫性を求める「公的輸出信用と環境社会デュー・ディリジェンスに関するコモンアプローチ」等のOECDでの議論等を踏まえて策定した。上記JBICガイドラインの見直しは、上記議論等の進展を勘案しつつ、我が国政府、開発途上国政府等、我が国の法人等、専門家、NGO等の意見を聞きながら、透明性を確保して行っていく。【財務省】
  • NEXIでは、2015年の「貿易保険における環境社会配慮のためのガイドライン」改訂に際しては、検討すべき環境社会配慮の範囲に人権の尊重を含むことを明確化したことを踏まえ、引き続きガイドラインに基づき適切な環境社会配慮確認に努め、必要がある場合にはガイドラインの見直しを行っていく。【経済産業省】
  • 調達要件、審査や選定、契約条件等、調達における一連の流れにおいて、引き続き、人権尊重への取組を推進していく。【外務省、財務省】
  • ジェンダーの視点からは、「女性・平和・安全保障に関する行動計画」において、特に開発協力分野も含めた「Ⅳ人道・復興支援」の取組が「ビジネスと人権」の文脈に該当する。我が国の支援の実施においてJICA事業や国連機関等の事業で企業と連携をする場合に、引き続き、ジェンダーの視点を盛り込んでいく。【外務省】